宮城のイチゴ(その1)
春の味覚を代表するイチゴ。宮城県内の主な生産地は亘理町や山元町などの県南沿岸地域ですが、石巻市や東松島市といった県北沿岸地域でも盛んに栽培されています。県内で栽培されている品種は、県オリジナル品種の「もういこ」と、栃木県生まれの「とちおとめ」が中心です。どちらも人気の品種で、「もういっこ」は寒冷地でも生育がよく、果実が大粒の良食味品種として2008年に誕生しました。
果実は鮮やかな赤色で、適度に歯応えがあり、糖度と酸度のバランスが良く、すっきりとした甘さです。大粒ですが、ついつい「もう一個」と手を伸ばしてしまう美味しさから「もういっこ」と名づけられました。県内のイチゴの主産地である亘理町や山元町は、東日本大震災による津波の被害が大きかった地域で、多くの栽培施設は壊滅状態になり、一時は栽培が困難になりましたが、津波をかぶった土地でも土耕から高設に切り替えたり、移転して新たに施設を構えたりする生産者が出てきました。
仙台市宮城野区蒲生を拠点とする農業法人「みちさき」もそのうちの一軒です。蒲生も津波の被害が大きかった地域で、被災した農業生産法人の5人の経営者が集まり、12年夏に「みちくさ」設立しました。移動可能な高設の養液栽培で、トマト、葉物類を育て始めました。イチゴの栽培は2013年からで「もういっこ」と、イチゴの香りが豊かな三重県生まれの「かおり野」を作っています。みちくさの佐々木洋輔さんは「高設の養液栽培は津波をかぶった土地でも問題なく育っている。さらに移動式のため、限られたスペースで生産量が見込める」と説明しています。