一ノ蔵の"すず音"
宮城の米どころ大崎市にある「一ノ蔵」は、手作り仕込みにこだわりながら、高い酒質と斬新な商品開発にチャレンジし続けてきました。まだ、日本酒の等級種別があった昭和52年、あえて審査を通さず発売した「一ノ蔵無鑑査」は宮城の銘酒として今も高い人気を誇っています。「昭和60年代から女性に向けたお酒の開発が始まりました」と同社のマーケティング室の永井さんが話しています。
初期のころは、低アルコールの「あ、不思議なお酒」や「ひめぜん」で手ごたえをつかみ、いよいよ次はシャンパン感覚の酒を目指し、平成10年に「発砲清酒すず音」を発売するとすぐ、みやぎのものづくりフェスティバルで技術賞を受賞しました。その翌年から全国発売し、同12年12月には、単月の出荷量が10万本を記録しました。当初は斬新過ぎて、「何だコレは!」という評価でした。
"すず音"は瓶内2次発酵、いわゆるシャンパニュ方式で作られます。地元産トヨニシキを原料とし、普通の酒と違うのは、もろみを造る麹の量を減らして軽くし、温かい掛け米を投入して一度甘酒のようにします。温度管理をしながら約一週間後、発酵途中で一度搾る。これを瓶詰にし、2次発酵で炭酸ガスを閉じ込めれば完成です。とはいえ、2次発酵でアルコール度数と炭酸ガス圧を一定にするのは至難の業でした。