丸森の大イチョウと巨岩
15階建てのビルに相当する、高さ47mほどのイチョウの大木が丸森町にあります。幹回りも17mと、とてつもない威容を誇り空に向かって聳え立っているといった感じです。かつては巡礼者が参拝した聖地で、伊具三十三観音巡りが盛んな時代から「大空を覆えるほどの銀杏の木これや大慈のみかげなるらん」と御詠歌にも読まれています。樹齢は600百年以上といわれています。
大イチョウの傍らにある苔むした地蔵尊や庄吉観音堂跡に、信仰の名残が感じられます。庄吉観音は伊具三十三観音第十八番札所で、ここには、こんな伝説が伝わっています。昔、ここに住んでいた働き者の庄吉が大病にかかり困っていたととき、夢枕に地蔵様が立ち、「大イチョウの下の観音様を掘り出して、お祀りすれば治る」とのお告げがあり、掘ってみると観音様が出てきて、枕元に置いたところ庄吉は回復し、その後、お堂を建てて祀り、人々は「庄吉観音」と呼ぶようになったという。
また、丸森には山に鎮座する奇勝「立石」と呼ばれる大きな石もあります。丸森は花崗岩の産地で、巨石が数多くありますが、その一つが奇勝「立石」で、不思議な光景を目にすることができます。その高さは何と12m、周囲が25mで、町中から仰ぎ見ることができるくらいです。古老の話によれば、「春秋の祭りの前後、立石の周りを天狗が舞った」そうです。石の周囲からは、弥生式土器も出土し、高さ数mの大石も散在しているところを見ると、ここが信仰の場であったのではとロマンを誘います。