円通院のバラ
ライトアップされた紅葉で知られている松島の円通院は、「数珠の寺」「バラの寺」など様々な名前で呼ばれていますが、この季節に見頃を迎えるバラは見事なものです。19歳でこの世を去った伊達政宗公の孫である光宗の菩提寺である円通院の奥、野蒜石の階段を登った木立の中に、国の重要文化財に指定されている霊廟・三慧殿があります。宮殿型の厨子は、400年の時を経てもなお色鮮やかです。
中でもひときわ美しいのが、厨子の扉裏に描かれた深紅のバラです。支倉常長が、ヨーロッパから持ち帰った花の文様を描いたとされるもので、「日本で最初の西洋バラの絵」と言われています。バラはローマの象徴で、これと対をなしているのが水仙ですが、どちらも描かれているのはあくまでも扉の裏で、表には白椿、桔梗など日本古来の花が描かれている。
そしてこの扉は、戦後まで開かれたことがなかったということです。副住職の天野晴華さんによりますと、「明治から長く住職のいない状態で、祖父母が入り、戦時中に畑にしていたところを庭にして、祖父がせっせとバラを植えました」とのこと。これがこのバラ園の始まりだったわけですが、6月下旬には美しく咲き誇り、優しい香りで霊廟を包んでくれます。