おくずかけ
仙台市から県南部を中心に、春秋の彼岸やお盆の代表的な精進料理として「おくずかけ」が伝えられています。数種類の野菜や豆腐、油揚げ、豆麩などを椎茸の戻し汁をだしにして煮込み、うーめんを加えて、くずあんでとろみをつけた汁物です。古くから禅宗に伝わる普茶料理の「雲片」に似せて、季節ごとの野菜を無駄なく使うというのが特徴です。
遠田地方には、使う材料と造り方がよく似た「スッポコ」という精進料理が、明治以前から伝わっていて、これもやはり寺を通して伝えられた普茶料理の一種「卓袱(しっぽく)に由来しているのではないかと言われています。しかし、こちらはおくずかけとは違い、葬式や法事の本膳の後に、裏方をしてくれた人たちを慰労するために作られた料理です。
また、桃生地方には「のっぺい汁」と呼ばれる料理がありますが、これも材料や作り方が同じで、野菜とめんのくずあんかけ汁です。ただこちらは、行事や仏事などに関係なく、日常の食事や夜なべ仕事をした時の夜食として大正時代ころから伝えられたものだそうです。いずれの料理も、名前の違いほど見た目も味もそう変わりないところが面白いですね。