国破れて山河あり
東日本大震災によって破壊された家屋は数知れないが、解体されて更地になってみると、この場所にはどんな建物があったのだろうかと、ふと立ち止まってしまうことがあります。そういえばあの災禍から早半年以上も経過したのだと、改めて月日の早さを実感しています。瓦礫も目に付く場所からは一応片付けられたようです。
しかし、実際に街を歩いてみると、その傷跡の深さは震災直後よりもむしろ強烈に感じることもあります。例えば、歩道は原野のごとく長い雑草が生え、ところどころからのぞかせるインターロッキングの鮮やかな色、そして、蓋が壊れたままの側溝など、とてもついこの間まで人が歩いた道とは思われません。正に、国破れて山河ありといった光景です。
遠くから聞こえてくる選挙カーの叫び声も、ひとしお空しく響きわたり、まるで別世界から聞こえてくるようにさえ思われます。ただ、震災前と比べると工事現場の警備員さんの表情がにこやかになったような気がします。それは、地獄で仏に会ったような気がするからでしょうか。それとも、復興の槌音が心に響いたからでしょうか。