ムサシの引っかき傷
ムサシがわが家に来たころは、そこら中引っかきまわしていような気がしていました。ところが、今になってその傷跡を探そうと思っても、それほど多くないことに気がつきました。当初は大変なやんちゃ坊主来たものだと思った記憶がありますが、テーブルの脚やソファー、玄関の床ぐらいでしか確認することができません。
ほんの数カ月間の出来事だったのかもしれませんが、今思い出すとどれも懐かしく、その傷跡が宝物のような存在になっています。特にソファーなどは今でも彼が特等席にしていた辺りは、皮が破れているにも関わらずどうしても捨てがたく、取り替える話が持ち上がっては立ち消えになりながら今日を迎えてしまいました。
今では、それどころか、気がつくとムサシの残した傷跡を二人で探しまわっています。それはムサシがこの家で暮らしていた証拠を見つけるというよりも、現在もみんなで暮らし続けていることを実感したかったからなのでしょう。ムサシもその思いは同じで、自分の居場所が確保されていることにすごく満足しているようです。