ムサシの悲しい顔
長かったゴールデンウィークが明けたある日の朝、一本の電話がかかってきました。それは大変お世話になった人の訃報でした。その人は私たちばかりではなく、ムサシにも言葉をかけてくれる優しい人でした。お悔やみに窺う前にムサシにそのことを話すと、とても悲しそうな表情を浮かべ私をじっと見つめていました。
あまり多くは話さなかったのですが、誰のことを話しているのかすぐにのみ込めたようです。その人がわが家を訪れ、話がはずんでいる時には、黙って2人の話を聞きながら目を閉じていたものですが、話の内容は全て理解していたようです。そして、その人が帰る時は必ず声をかけてもらえるので、特に印象が深かったようです。
それでも、ムサシが悲しがっているのは、私の顔が悲しそうに見えたためなのでしょう。彼は、そういうワンちゃんで、並の人間よりよほど空気が読めます。特に厳しく接したことはないのですが、私の性格をすっかり把握しているせいか、私の喜びや悲しみを寸時に判断し、気持ちを察してくれるのがとても心地よく感じます。