ムサシの方向感覚
わが家のムサシは、晩年こそあまり遠出しなくなりましたが、若い時はかなり遠くまで足を伸ばしたものです。そのため、街中の地理に明るくなったのは当然としても、今までに訪れたことのない場所に行った時でも方向感覚はしっかりしていました。初めて通る道で不安になったこともありましたが、ムサシはどこに通じていかお見通しのようでした。
何故そんなことが言えるかといえば、彼は同じ道を通るのを極力避けることがステータスだったので、散歩から帰る時もなるべく回遊する形で帰途につきます。知らない場所から帰る時も同じで、自分が知っている道に出るように廻り込みます。それがまた、実に正確で、この道はあそこに通じているはずだと推理しているようでした。
それだけではありません。昔歩いたところに行ってみたくなった時などは、坂道や階段などを蛇行するように歩き、足腰になるべく負担がかからないように工夫しているようなのでした。これなども、決して私が教えたのではなく、彼が階段登りの「トレーニング」で会得したようなのです。彼の推理力や学習能力には驚かされます。