角田宇宙センター
角田の中心街から車で20分の場所にある角田宇宙センター。174万㎢(野球場が100個程入る広さ)の敷地には、ロケットの研究・開発に不可欠な施設がたちならんでいる。中でも、「高温衝撃風洞」は、世界最高性能を誇る実験施設。地球帰還カプセルや宇宙往還機などが大気圏に再突入する際の現象現象を把握できるので、NASA(メリカ航空宇宙局)をはじめ世界各地の研究員が試験に訪れている。また、角田宇宙センターは、液体水素と液体酸素を使った日本初の実用ロケットエンジンLE・5の時代から、エンジン開発の最先端の研究機構として知られている。
現在、角田宇宙センターでは、次世代ロケットであるH3のエンジン開発が進行中だ。搭載する人工衛星のニーズの変化に対応するため「早く・安く・確実に」をテーマとしている。順調にいけば、来年度中に打ち上げる予定。一方で、飛行機のような新しいフォルムのロケットエンジン開発も、急ピッチで進んでいる。これは、大気中の空気を利用するエアブリージング(空気吸い込み式)エンジンとロケットエンジンを融合した複合サイクルエンジン。空気を使うことで、エンジン燃料を減らすことができ、搭載量を増やすことができる。
このスタイルのエンジンは、1980年代に黎明期を迎えたが、極めて難しい技術だったため、多くの研究機関が次々と撤退。しかし、角田宇宙センターは可能性を信じて研究を重ねてきた。かつては「何に使うんだ」という批判を受けたという。吉田所長は、「今、複合サイクルエンジン開発の波が来ています。角田宇宙センターでは、着実に実現に近づけています」と話します。新時代のロケット誕生は、まさに角田宇宙センターに委ねられている。