ビストロ タク
よく気をつけていないと通り過ぎてしまいそう。洒落た一軒家のような佇まいの店、それが「ビストロ タク」である。店主の沼田卓さんは東日本大震災を機に、故郷である名取に店を開き、今年で6年目を迎える。早速、オープンな厨房で腕を振るい始める。造っているのは「あたたかいロースハムのボーチドエッグ サマートリッシュフ添え」と「ホタテの自家製ベーコン巻き ユズコショウと粒マスタードのソース」だ。
「ハムもベーコンも燻製です。燻製はフレンチの調理方法の一つなんですよ」。銀座のフレンチレストランで経験を積んできた料理人のひと言に、目からうろこである。ハムには米沢の豚を使い、ローズマリー、タイムと一緒に塩に浸ける。豚の脂は沸点が低く溶けやすいので、薫りづけは30分以上浸けないそうだ。「米沢豚の持つ美しい色も生かしたいから」。皿に盛り付けられたロースハムはピンク色で、口に入れば爽やかさを含んだ燻香が広がる。
香りをつけすぎない、ローストしすぎない、ギリギリのタイミングを大切にしている。最後は目と手による確認です」という沼田さんが作るひと皿は、丁寧な仕事ながら気どりがなく、素材のよさも堪能できる。野菜はほとんど名取産を使用。ズッキーニもささぎも、みずみずしい。今日の料理は2つとも初めて作ったもので、夜のコースの一品になるとのこと。「フレンチを身近に楽しんでもらえるよう、私も楽しんで作っています」と笑顔を見せた。