うどんの青山(せいざん)
うちのうどんはね、手抜きうどん。こだわりなんかてないの」と気風のいい語り口が気持ちいい店主、樋口志朗さん。聞けば、首都圏の重要な建設現場で重機を扱っていた元現場監督。仕事で訪れた香川県で生まれて初めて讃岐うどんを食べ、あまりの美味しさに度肝を抜かれたという。以来、渋谷にあった讃岐うどんの名店「麺喜やしま」に通いつめ、いつかこの味を再現してみたいとの願いを叶え、23年前に故郷白石市に店を構えた。
樋口さんのうどんの根強いファンは多く、県内はもとより讃岐うどんの本場香川県からもお客さまが訪れる。夏うどんとして進めてくれたのは、天ぷら付の「冷やしぶっかけうどん」と、「鴨せいろ」。注文されてから茹でる自家製うどんはモチモチとふくよかで、角が立っていない分いい具合に力が抜けている。鴨せいろは、鴨肉が入ったつゆに、山形名物麦きりがスタンバイ。つゆの中には鴨肉が数枚。
細い麦きりに鴨肉のコクがたっぷり溶けたつゆが染み込んで、次から次へと箸が上下に忙しい。青山には、ほかにもカレーライスに見立てた「カレーどん」もあるのだが、自家製ルーに使うスパイス14種類をすべてインドの業者から取り寄せているとのことで、その味たるや体が目覚めるほどに美味しい。特性カレーうどんのほか、白石の豚肉を使った「カレー南蛮」も人気が高い。手抜きとは程遠い、青山の技と心意気がはえるうどんである。