自家製スモーク料理 たもたも
ドアを開けると、山小屋を感じさせ心落ち着く空気が迎えてくれる。窓から真正面に見えるのが、アエルの光きらめく風景というギャップがむしろ楽しい。「店を始めたときは今のように都会的な駅前ではなく、もっと庶民的なにおいのする界隈だったんですよ」と話すのは、マスターの横山頼夫さん。元デザイナーの横山さんは根っからのアウトドア人間で、フライフィシング、カヌー、クロスカントリーとさまざまことをやってきた。
驚くのはその探究心で、フライフィシングもただ魚を釣るだけでなく、竿をカーボンや竹で自作するほど。釣ったイワナやヤマメを燻製にするのも探究心のなせる技だ。店をオープンしたのは29歳の時。それから36年間、山や川に通いながらこだわりの燻製を提供している。一番人気はスモークサーモン。下ごしらえを済ませたサーモンをリンゴのチップで10日間燻す。じんわりとくる燻製の香りとサーモンの味わい、皮までおいしい。
「燻煙のやり方は4通りありますが、うちは低い温度でじわーっと燻していく冷燻です。チップはリンゴの他に桜、ヒッコリーなど5種類で、例えばホヤならリンゴとオールダーのミックスでというように、食材に合わせて使い分けています」。「食材に燻りをかけますが、お客さんを煙に巻くのもすくなんです」とジョークをとばす横山さん。そんな気さくな人柄もあって、常連さん、その息子さんなど2代にわたって通う人も少なくないという。静かなジャズが流れる店内で、燻製をつまみにゆったりとバーボンを傾ける。秋の夜長にぴったりの過ごし方だ。