粋な計らい
2017年9月、アメリカのフロリダ州に大型のハリケーン『イルマ』が上陸。その後は北に向かって通過し、隣接するジョージア州サウスカロライナ州でも大規模な停電が発生するなど大きな被害をもたらしました。ハリケーンの接近を受けて、人々は少しでも安全な場所へと避難します。ジョージア州の沿岸に近いステーツポロ市に住むジェシカさんも、内部のアトランタ市へ避難しようとしていました。そして彼女は、愛犬の『ルナ』も一緒に連れていくつもりでした。ジェシカさんはできるだけ早くアトランタへ向かいたいのですが、1つ問題がありました。彼女はこの日、どうしても大学の授業を受けなくてはならず、授業の後でルナを迎えに行くことになると渋滞に巻き込まれてしまう可能性があったのです。そこで、彼女はあるアイディアを思いつきます。それはルナを学校に連れていくことでした。「教授、犬を授業に連れてってもいいですか?」という、一か八かの賭けに出ることにして、担当の教授に次のようなメールを送ることにしました。
「ケネディ教授へ、私の名前はジェシカ・ルイスといいます。あなたの午後3時30分からの講義の生徒です。このお願いの答えはおそらく『ノー』だということは理解していますが、貴方が実は『イエス』といってくれるくらいクールな教授かもしれないので、思い切ってお願いしてみることにしました。私の犬を、今日の授業に連れていってもいいですか? そうしたら本当に助かります。教授の授業が終わり次第、できるだけ早くアトランタの家に向かわなくてはいけないのです。(渋滞は避けたいけど、教授の授業はとても重要なので欠席したくないので...)。犬を授業に連れていくことが出来れば、授業の後でアパートに迎えに行かなくてもよくなります。約束します。犬はいい子にしていられます。この子の可愛さが教授を説得する手助けになるように犬の写真を添付します」。ダメ元で教授にメールを送ったジェシカさん。するとすぐにケネディ教授から返信! 「君は私のことを『クール』と呼んだことで私がイエスと答えると思ったのかい? その考えはうまくいかないよ。でも...君の犬が見るからにいい子だから、連れてきていいよ。
なんと、教授の答えはイエス! ルナの可愛さが勝ちました! ジェシカさんと一緒に授業に出席したルナは、約束どおりとてもいい子に過ごしていたそう。さらにジェシカさんのクラスメートからも可愛がられて、はじめての授業を大いにたのしんだということです。おかげでジェシカさんは、ハリケーンが近づく前に無事にアトランタへ移動できたそうです。本人は否定しても、ケネディ教授のこの粋な計らいは『クールな教授』と呼ばれるにふさわしいのではないでしょうか。ボクは心配です。もしもこれが、日本だったらどうでしょう? 規則がどうのこうの、あるいは、せいぜいレポート提出で公認欠席ぐらいが関の山で、もしかすると、教授がこれ幸いと休講にしてしまうかもしれません。おおらかであることは、決して不真面目なことではなく、合理的であるという気質に欠けているから、規則から一歩も離れられず、的外れな頭の固い対応しかできないのではないのでしようか。こういう誰かさんたちが仕切っている全近代的な社会では、「何が一番大切なことなのか」を、自分の頭で考えられる子供には育ちにくいのではないでしょうか?