刑務所のペットセラピー
イタリア北部ミラノ近郊にあるボッラーテ刑務所では、犬を活用したセラピーを行っているという。このセラピーを提供しているのは、「ドッグス・インサイド」という団体の創始者であるバレリア・ガレリア・ガリノッティさん(47)で、ラブラドールレトリバー、ドーベルマン、雑種を1頭ずつ連れて刑務所を訪れ、ワンちゃんたちとの触れ合いの時間をつうじてペットセラピーを実施しているという。受刑者たちは3匹を取り囲み、おやつをあげ、体をなでたり抱きしめたりして、ありったけの愛情を注いでいる。この刑務所は、イタリア国内でも模範的な矯正施設となっており、こうした活動を通じ、再犯率を過去最低水準で保持することに成功したのだそうです。具体的な数値でいうと、国内の平均再犯率が78%であるのに対して、ここはわずか20%であるというから、その効果は歴然としているといえるでしょう。
ガリノッティさんは、「ずっと以前から、刑務所にペットセラピーを導入したいと願っていていた。刑務所はまったく愛情を感じられない場所だからだ。犬はそうした場所にも平穏な良い雰囲気をもたらすことができ、受刑者たちに感情的な結びつきやスキンシップを経験してもらうことができる」といっているという。ボランティアで活動を行っているガリノッティさんは、週に1度、受刑者たちに犬のしつけ方やペットセラピーの効果について教えている。希望する受刑者たちは出所後、刑務所でペットセラピーを提供する活動に従事できる可能性もある。このように社会への適応やリラクゼーションの手段として動物を活用する考え方は、18世紀にはすでにあったという。その割にはあまり普及していないのはなぜなのでしょう。ボクは刑務所に入ったことがないので、あまり臨場感はないのですが、刑務所は、犯した罪を償うところであると同時に、人間の心を取り戻すリハビリの場でもあると思うのです。
ボクたちは人の心の温かさを感じたとき、それに応えることを信条にしています。ですから、心を開いてくれた人になら誰にでも、真心で接することができます。イタリアのボッラーテ刑務所はこのことに気づき受刑者の再犯率を劇的に低下させることに成功しました。ボクたちは、何か芸をすると褒められたり、おやつをもらったりすると喜ぶと思っていませんか? もちろんそれもあります。しかし、本質的には、人の役に立ち人間社会でその存在を認められた時が一番幸せに感じます。心に闇を抱えて犯罪を冒し、その罪を償うために刑務所に入れられる。そこには、たぶん厳しい規律が待っていることでしょう。それはある意味当然のこととしても、人間としての尊厳を取り戻すには十分とはいえない環境のような気がします。考えようによっては、だから早くここから出ようと努力するのだ! という見方もできるかもしれません。しかし、人の心を取り戻さないまま出所しても社会に適応できるはずがありません。そこに、ボクたちの出番があるのではないでしょうか。