蔵王の伏流水で醸す極上の日本酒
明治6年に創業して以来、数々の鑑評会で金賞や優等賞を受賞してきた酒造「蔵王酒造」。直近では平成29年新酒鑑評会で「大吟醸 蔵王」が金賞受賞、全米日本酒鑑評会2017では、大吟醸B部門で「純米大吟醸 昇り竜」が金賞を受賞している。国内外で高い評価を得る極上の日本酒は、水と米、酵母にこだわりぬくことから生まれる。水は酒蔵の地下からくみ上げる蔵王の伏流水。主たる米は、地元白石や角田の契約栽培のもの。昨年から蔵王酒造で、次代を担うために研鑽を積んでいる取締役の渡邊毅一郎さんは「ここでしかできない酒造りを行っています」と爽やかな笑顔を見せる。「お酒の成分を分析してみると同じでも、味わいや香りは違ったりするんです」と相槌を打つのは、若手杜氏の大滝信也さんだ。「思ったとおりの仕上がりにならないことが多いですが、それもまた、酒造りの楽しさの一つ」とも語る。
蔵王酒造の日本酒は、かつての「濃醇」と呼ばれる味わいだけではなく、軽快でキレがあり、フレッシュなテイストがラインナップされている。「ZAO inspiration」は、若手社員たちで手掛けた。また、「心込めて醸し、心を込めて管理し、心を込めてお届けする」をコンセプトとし、スピーディな火入れと、自社の冷蔵庫や酒販店での温度管理を徹底した「ココロ(K)シリーズ」も展開中だ。蔵に併設された「蔵王酒造展示館」では、昔の酒器などを展示しており、製品の販売や地方発送の受付も行っている。この3月から、年末年始を除いて毎日開館するようになった。それまで設けていた休館日をなくしたのは、酒造見学特に見応えがあるおすすめ期間(12月上旬から3月中旬/要予約)以外にも、多くの人に蔵王酒造を訪れてもらいたいと思ったから。「蔵王に来ていただくことで、蔵王酒造の酒を知っていただき、好きになっていただければ嬉しいですね」と渡邊さん。展示館では、大吟醸以外のお酒はすべて試飲できる。日本酒と白石産のハーブ、レモンバーベナを使ったリキュール「Veveine(ヴェヴェーヌ)」は今までにない味わい。
発売して2年。ハーブがもたらす心地よい風味と甘酸っぱい爽やかな味わいが、女性をはじめ幅広い層の人気を集めている。酵母の持つ自然な紅色が美しい「花撫子」は30年来のロングセラー。低アルコール日本酒の先駆け的存在でレトロな趣のるラベルも魅力。光を避けて冷蔵しないと退色してしまうというのも天然の色の証拠だ。伊達藩絵師・菊田伊州の作品がラベルに躍るのは「純米大吟醸 蔵王上り竜」。角田市の契約栽培農家で造られた「美山錦」という酒米。それを45%に磨き上げ醸した酒はコメの旨みを残しながら雑味なく、食中酒の最高峰と杜氏の大滝さんは胸を張る。その魅力を舌で是非知ってほしい。蔵王酒造では、他県の様々なコメを使った酒造りも予定しているとのこと。新しい酒米の試験醸造や、日本酒を楽しむコラボイベントにも取り組んでいる。若い感性から生まれる日本酒文化に期待している。