特大のおはぎ
わが家では、お彼岸になると特大のおはぎが食卓に登場します。お正月やお盆は年々簡素になりつつある中で、何故かお彼岸になると、お母ちゃんはおはぎを作ってみんなにふるまいます。普段の生活に必要なものは、スーパーとコンビニ、それに百均でほぼ間に合うようになったため、昔のように腕を振るって料理を作らなくても済むからということもあるのでしょうが、日本の伝統行事まで簡略化されてしまい、少し寂しい気もします。それはスーパーやコンビニのせいではないことはよくわかっています。お母ちゃんも、そんな心の葛藤があるのかどうかわかりませんが、とにかくおはぎの大きさだけは、心なしか昔よりやや大きくなったような気がします。
ボクは、どちらかというとおはぎはそれほど好きというわけではありませんが、相棒のオヤジは大好きです。わが家の家族は、お母ちゃんはじめ、オヤジもボクもあまり好き嫌いがないので、みんなで同じものを食べても特に残したりしません。ただ、オヤジが以前のように食べられなくなった(正確には食べるのをセーブしている)ため、つくる方のお母ちゃんとしても何となく気分が乗らないのかもしれません。例えば、オヤジも大好きなカレーなどは、大きな鍋にいっぱいつくるのが定番でしたが、今ではなるべく余らないようにしているようです。次の日に食べるカレーは最高だというオヤジにしてみれば、物足りなさを感じているようです。
そんなうっぷんを払拭するために、お彼岸という節目に、特大のおはぎを作っているのかもしれません。その効果はてきめんで、アヅキを煮ている前日から、「明日はおはぎか」とオヤジは心を躍らせています。そのくせ、いざおはぎを前にすると、せいぜい1個半ぐらいで抑えなければなりません。ちょっとうっかりすると、余分なエネルギーを放出するのに何日もかかることになるからです。それでも、日が傾くのがめっきり早くなったことを実感しながら、虫の声に耳を傾けるのもこの季節、明日は蝉の声が聴けるかなと、心細くなるのもこの季節ならではです。特大のおはぎを名残惜しげにゆっくりと味わいたくなる不思議な季節でもあるようです。