みなみかた花菖蒲の郷公園
今では、仙台から1時間ほどでいける登米市には、約5haにも及ぶ大庭園があります。回遊式庭園の一角に日本庭園があり、池から流れ落ちる小川のせせらぎが心地よく響く中、大輪のハナショウブが風に揺れている。6月から咲き始め7月まで見られます。広い公園を散策していると、遠くに青紫の花々が見えます。近づくとアジサイの群生で、こんもりとした紫陽の森となって目の前に広がっている。この森を歩いていると、石柱や玄昌石の彫刻が随所にたたずんでいる。
未知の空間へと誘う扉のようでもあり、アジサイの森全体に不思議な雰囲気を添えている。点在する彫刻はいずれも、登米市出身の世界的彫刻家サトル・サトウの作品です。アジサイは日本原産で、最近でこそ人気のある花ですが、江戸時代以前の文学にはほとんど登場しておらず、万葉集でも2首しか詠まれていないという、あまり注目されなかった花のようです。つぼみが白で、開花すると薄青、青や紫色へと微妙に変わる色の変化も、現代人は楽しみとするところですが、昔は化花(ばけばな)、幽霊花など不名誉な呼び名もあったという。
一方、ロマンチックな話もあり、オランダ商館付きの医師として長崎にいたシーボルトは、ドイツに帰国して「日本植物誌」を著し、大好きなアジサイ20種ほどを紹介した際、長崎で親しかった恋人"お滝さん"の名をとり、その1種に"オタクサ"の名を付けたという。晴れた日の空のように、青い大きな花オタクサ。ここに咲くアジサイもそうです。しっとりと雨に濡れる姿も風情があるが、初夏の青空の下で眺める気品のある姿もまた魅力的です。ちなみに花菖蒲は、約300種80万本が植えられているそうです。