仙台駄菓子本舗 熊谷屋(その1)
江戸時代中期、戦国時代の争乱の記憶も薄れかけてきた頃、華やかな元禄文化が花開く。経済的に裕福だった上方の商人たちが中心となり、芝居興行、芸術文化を庶民が楽しむような風潮が生まれました。仙台駄菓子の老舗である熊谷屋は、その元禄8年の創業以来ずっと同じ場所の通町沿いの地で商いを続けてきました。
「仙台藩4代藩主・伊達綱村公の頃は、町人の間にも少しずつ安心と余裕が生まれてきた時代で、仙台でもお菓子や料理文化が広がってきたのだと思います」と話す、熊谷屋の10代目・熊谷典博さん。「地方の駄菓子屋で有名なところは福島の会津、川越などがありますが、仙台駄菓子の特徴は種類の多さ。仙台駄菓子は、今は20種類前後ですが、昔は50から60種類あったと伝わっています」。
一つの地域でこれだけの多彩な駄菓子を作り続けてきたのは、仙台駄菓子だけだということです。同じ場所で暖簾を守り続けてこられたのは、その時代に合わせて材料などを変えてきたからだという。特に駄菓子などの食べ物は、昔の材料や味では売れませんから」。老舗の代表として、これまでの歴史を将来に繋げていかねばならないというプレッシャーもあるという。