こけし工房 丑蔵庵
遠刈田温泉の新地地区には、160年余りの伝統を誇るこけし工房が立ち並んでいます。丑蔵庵もその一角にあり、凛とした佇まいが印象的な工房です。現在の当主である佐藤英裕さんは三代目で、奥様の君子さんとともに工房と店舗を運営しています。建物の内部は、店舗部分と工房に仕切られていますが、一体感がある造りで1000体以上もあるこけしの展示と工房の製作風景が同時に楽しめるようになっています。
英裕さんは、普段は柔和で気さくな人柄ですが、一旦ろくろの前に座ると工人の顔になり、鋭い眼差しで製作に臨みます。また、奥様の君子さんの絵づけの技もかなりのもので、女性ファンも多いようです。特に近年は、「こけ女ブーム」といわれる第三期のこけしブームで、30歳代の若い女性の体験ツアーなども盛んだそうですから、そのうち、隠れファンがどっと押し寄せるかも知れませんね。
お二人が力を注いでいるのは、もちろん伝統こけしですが、その他にも創作こけし、玩具、生活用品など多岐にわたります。なかには、昔懐かしい小さなコマやけん玉などもあり、心の中に故郷を呼び起こしてくれるような気がします。それは、築30年とは思えないほどアンティークな外観や内装とも関係があるのかも知れません。それに、豪快だが何故か心を和ませる蔵王の雪解け水の音、これも心を揺り動かしているのかもしれません。