ムサシの智慧をもう一度
いよいよ押し迫ってきました。振り返ってみると今年も何かともめごとの多い年でした。といっても、わが家の事ではありません。取引を巡るトラブル、従業員の退職に関するトラブルなど様々でしたが、双方の言い分を聞く限りでは、それぞれ言い分があり、どれも無視するわけにはいかない内容です。しかし、何とか折り合いを付けなければならないところが難しいところです。これらの争いは、概していうと立場の違いによるものですから、どちらにも大義あり、法律の規定によって裁けるほど単純なものではありません。
最終的には両者が歩み寄って妥協するしかないのですが、一旦こじれるとまるで水と油のように相容れないにらみ合いになり、こう着状態がしばらく続きます。こうした時に役に立つのが、ムサシ流の解決策です。それは、相手の主張を受け入れながら自分の信念を貫く姿勢を示すことです。わが家のムサシは、私たちの誘導に従う姿勢を示しながらも、自分の主張を曲げずに行動し、それとなく自己主張をして、最終的には自分の思うとおりに私たちをコントロールするというあのやり方です。
散歩のコースを変えたい時によくこの手を使います。徹底して逆らうのではなく、やんわりと自分の行きたい方向に私たちを誘導するわけです。その見事さは、まるでムサシがリードを握って私たちをコントロールしているかのようです。世間の争いごとも、お互いの主張を足して二で割るやり方ではなく、両者の言い分をよく聞いたうえで、両者の利得が最大になるよう、それとなく誘導するのが一番の解決策です。ムサシが言うには、相手を裏切ったり、力づくで押し込めると、後で必ずしっぺ返しにあうというのです。