ムサシの高いびき
ムサシがわが家にやってきたころは、戸惑いながらも家族に馴染もうと一生懸命でした。それでも、しばらくすると、自分の居場所を見つけゆったりとくつろげるようになりました。それでも、まだ、完全に家族になりきれなかったのか、少し遠慮がちなそぶりもありましたが、自分にとって安全な場所であることを確認しながら、エリアを拡大していきました。
完全にわが家の一員になったと感じたのは、好きな場所に寝転がって居眠りしているときでした。そして、小さな寝息は感謝の気持ちを表しているようにも聞こえ、時には高いびきが家中に響いたときでした。あれから、もう来年で20年一緒にくらしていることになりますが、社会のルールからはみ出した行動をとったことなどは一度もありません。この点については、私たちの方が感謝しています。
その相棒ムサシの高いびきを最近久しぶりに聞いたような気がします。それは、夢だったのかどうかわからないのですが、とにかく聞こえてきたのです。それは、二番目に大きい孫が、今年、中学に入学するという話をした晩のことだったかもしれません。幼い日々のことが思い出され、20年もの間、平穏に暮らしてきたことが、ため息とも、いびきともなり、私に伝わってきたのかもしれません。