ついに靴下逮捕
あれはたしか、暮れもおし迫った12月の30日のことでした。いつものように、オヤジがお風呂から出て、パジャマに袖を通したところ、なんだか左の袖に違和感を覚えたというのです。チョウチン袖の出口のところに何か詰まっている。もしかしてと思って調べてみたところ、案の定、お母ちゃんが毎日探し続けていた片方の靴下が、そこに隠れていたのです。
早速、お母ちゃんに報告しようと思ったオヤジは、ちょっとした三択問題を思いつき、「洗濯機の後ろ」「パジャマの袖の中」「棚の奥」のうち、どこにこの靴下があったのでしょうか?とオヤジが切り出した。さすがはお母ちゃん、迷わず、「パジャマの袖の中」と笑いながら答えました。そして、靴下に向かっていったのです。"どうしてそんなところに隠れたんだ"と。
それでも怒りが治まらないのか、今度はパジャマに向かい、"あんたもあんただ。逃亡ほう助の罪で逮捕します"と。靴下もパジャマも、さすがに起訴は免れましたが、全く自分の非を認めようとしないお母ちゃんの姿勢に、ボクもオヤジもある種の感動を覚えました。世知辛い世の中を生き抜くためには、これぐらい自己中心的でなければダメなんだと思い知らされた次第です。