神秘の島「雄島」
松島の美しい景観を楽しむスポットに「雄島」があります。この島には、岩窟や卒塔婆などの仏教史跡が多く残っていて、その昔は「奥州の高野」と称されたほどの霊場でした。ここは、大切な人を弔った島でもあり、神通力を使うという見仏上人が住み着いていたという伝説もありますが、高徳の僧が修業したという言い伝えから、神聖視されるようになりました。
瑞巌寺宝物館の学芸員、新野一浩さんの解説によりますと、12世紀末の鎌倉時代には、一般の人々が島に板碑や石塔を建てて身内を供養したり、火葬骨を納めに来たりする風習が始まったといわれているそうです。板碑は、後に富裕層から庶民にも広まり、往時は「シラサギが群がっているよう」に見えるほど無数に屹立していたということですが、現在も70基ほどが残っています。
新野さんたちの研究によると、その10倍はあったと推測されています。昔は、美しい景色はこの世のものではないという認識があり、本土から端を渡って行く雄島は、あの世とこの世の狭間にあり、雄島から見える景色は極楽浄土だと考えられていたという。生きているものは、島々の景色を浄土に見立て、なくなった人たちを弔らいました。独特の空気が感じられるのは、そんな人々の祈りが残っているからなのでしょう。