ムサシの独り言
私はムサシに対して、自慢できるようなことをしたことはありませんが、強いて言えば負担に感ずるようなことは一度もなかったことでしょうか。人間同士の場合は、どんなに親しくしていても、時にはうっとうしいと思うようなこともあるかもしれませんが、ムサシがわが家に来てからただの一度もそう思ったことなどありません。
それどころか、いつも傍にいてくれないと不安になるくらいで、今でも彼の存在を確かめることがあるくらいです。そうした思いはムサシも同じだったせいか、ずっと寄り添って生きてきましたが、最近時々独り言をいうようになりました。しかも、そういう時は少し寂しげな顔をしているように見えるのですが、気のせいなのでしょうか。
彼は今まで一度も不平不満を言ったことはありません。自分の立場をよく理解したうえで私たちとの生活を楽しんできたのです。お互いに決して無理をせず自然体で暮らしてきたことが正解だったと今でも信じています。やはり、あの大震災により被災した仲間のことを思うと憂鬱な気分なるのだと思いますが、思いは同じだけにかける言葉もありません。