濡仏堂
濡仏堂は今回の東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市雲雀町一丁目に鎮座しています。「ぬれぶっつあん」の呼び名で親しまれているこのお堂は、伊達騒動で知られる伊達綱村公の時代、石巻一帯を襲った大津波の犠牲者慰霊と船舶安全、大漁守護を祈願して、綱村公のご母堂が京都の名高い仏師に依頼して1697年に建立したものだということです。
仏像が無事完成し、いよいよ堺から石巻へ向けて出発しましたが、船上で船頭が悪心を起こし、仏像を銚子の港で売り払い、代金を着服しようとしました。すると、突如海があれだし雷雨となり、哀れにも船は転覆してしまい、仏像もろとも銚子沖深く沈んでしまいました。数日後、ただ一人この悪事に反対した孝吉という若者が銚子の浜辺に打ち上げられ助かりました。
そんな出来事から100年以上たった1818年。雲雀の海岸で潮干狩りをしていた人たちが、波間に浮いている黒い物体を見つけ、引きあげたところ見事な仏像だったというわけです。これは、かつて銚子沖で沈んだ仏像だったということになり、浜の守り本尊として、露仏のまま安置されたのが、現在ここに鎮座している「ぬれぶっつあん」です。