ムサシの目線の先にあるもの
わが家では、ムサシと同じテーブルで3度の食事をしていました。一番先に席に着くのは何時もムサシでした。そして、ムサシ用の食事も席に着くと同時にテーブルの上におかれましたが、特に合図をしなくても先に食べ始めるということはありませんでした。座ってジッと待っている中、次々に私たち用の器が並べられるといパターンでした。
私たちが席に着くのがあまりにも遅い時は、ムサシが声をかけるといった場面も時にはありましたが、それは極珍しいことです。大抵は、天井からつるされている丸い大きな電灯をじっと見つめながら辛抱強く待っているのです。よく見るとムサシの視線の先には、電灯ではなく、そこから下に伸びている紐の先があったのです。
そのことについては諸説がありますが、とにかく時々話題になります。少し首をかしげてジッと見つめているところを見ると何か特別の思いがあったのか、それとも、時々ゆらゆら揺れる細い紐の先に触ってみたかっただけなのかどうかは解りませんが、食いしん坊の彼が、"食べましょう"という合図があるまでは決して食べ始めなかったことと関係があるのかもしれません。