何もかも承知しているムサシ
わが家のムサシは元々口数が少なく、私たちの話をただ黙って聞いているだけでした。時には多分気に入らないこともあったのでしょうが、殆ど不平らしき意思を表したことはありませんでした。それでも、こちらが問いかけるときちんとコメントしてくれるのですが、実に的を射たものでヒトの考えを否定するような内容ではありませんでした。
私たちも、ムサシの意に沿うよう努力した積りですが、ムサシは与えられた環境をそのまま受け入れ、精一杯生きることで我々に勇気を与えてくれようとしていたのでしょう。お蔭でこんなに楽しい時間を過ごすことができ、他の人の生き方を羨ましいと思ったことなどありませんでした。ムサシにもそう思ってもらえればありがたいのですが。
そんなムサシが時々私に囁くのです。それは体調がすぐれず沈みがちになっている私に対する激励のメッセージなのかもしれません。といっても、人間のようにガンバレとか同情するといったたぐいの言葉ではなく、それとなく打開策のヒントを囁いてくれるのです。今の私にとっては含蓄のあるムサシの言葉がなによりの薬です。