ムサシの七不思議(その5)
ムサシは生まれつき警戒心が強く、初めて出会った人が自分に好意的な人かどうか徹底的にチェックし、メガネに叶うとその後は穏やかに接するのでとても助かりました。それは犬の習性だということかもしれませんが、それだけではないような気がします。彼には独特の安全基準がありますが、時と場合によって柔軟に対応していたようなのです。
お客様に対する安全基準は、ほぼ例外なく私たちの対応を基準に判断していたようなので、ある程度は納得できるのですが、体験することで安全基準を修正できるものと、どうしても譲れないあるいは肌に合わないといったものもあるようでした。例えば、最初あんなに怖がっていた花火の音やシャッターの締まる音は学習により克服できました。
しかし、掃除機の音だけはどうしても馴染めないらしく、あの音がすると自分の陣地深く逃げ込むことが常でした。それから、終生変わらなかったことがもう一つあります。それは彼専用の座布団を取り替える時の行動です。こちらとしては、衛生面も含め良かれと思い新しいものと取り換えようとするのですが、しばらくは受け入れてくれませんでした。