ホヤの塩辛
三陸沿岸が主産地のホヤは、宮城県が全国の生産量の80%を占めています。そのなかでも石巻市が断トツで、昔は夏になるとホヤ売りの声で目を覚ましたということもしばしばありました。今ではそうした夏の風物詩はすっかり姿を消してしまいましたが、当時とくらべてホヤのフアンが格段に増えたような気がします。
ホヤという名前の語源は諸説あり、一般的にいわれているのは「ランプのホヤ」に似ているからという説が有力のようです。また、黄褐色の外皮のイボイボがパイナップルに似ていることから、「海のパイナップル」とも呼ばれています。ホヤは生食が中心ですが、石巻地方では干しホヤをお正月の雑煮のだしにする地域もあります。
今日ご紹介する「ホヤの塩辛」は、鮮やかなオレンジ色をそのまま塩漬けにしたもので、新鮮な磯の香りがたっぷりと閉じ込めたところが売り物です。天然ものしかなかった時代には浜の人たちにとっても贅沢な食べ物でしたが、わが家では、茹でたてのパスタに塩コショウ、バターひとかけら、それに「ホヤの塩辛」とざく切りのしその葉を手早く混ぜたものが時々食卓にのります。これを豪快に口に運ぶのがまたたまりません。