おぼろ汁
江戸時代の末期に関西の寺から涌谷町の寺に赴任してきた住職が、おぼろ豆腐の作り方とおぼろ汁の食べ方を親しい豆腐屋に教えたと伝えられている。「おぼろ汁」という名前の由来は、朧月夜のようにかすみ、ふんわりと浮いている豆腐の姿に似ていることによるものだそうです。おぼろ豆腐の作り方を聞くとぴったりの名前だとあらためて感心します。
豆腐は「木綿」「ザル」「絹ごし」の順に水分が多くなりますが、おぼろ豆腐は最も水分が多く軟らかい豆腐です。普通の豆腐よりも水分を多くして、凝固剤で固まってきたものを汲み取ります。そのため定まった形がなく、滑らかで口当たりがよく、水にさらされないので風味がよいのが特徴です。この食感を出すために長い間、加工方法や凝固剤の配合に工夫が重ねられてきました。
おぼろ汁は春秋の彼岸やお盆に仏前に供える涌谷町の精進料理です。今でもこの地方ではお正月の十六日、春秋の彼岸、お盆には欠かせない行事食として親しまれています。これらの日の朝には、作りたてのおぼろ豆腐を買うため、夜明け前から豆腐屋さんの前に行列ができます。店頭で湯気の立ちあがる寄桶から、出来立ての豆腐を小鍋などにすくってもらいます。