円通院の紅葉
JR仙石線松島海岸駅から歩いて数分の場所にある円通院は、伊達政宗公の嫡孫で、天逝した光宗君を祀っている。霊屋の「三慧殿」は、国指定重要文化財で、内部には、宮殿型厨子がある。厨子には、洋バラや水仙、トランプ模様などが描かれており、異国情緒が漂う。厨子の中には、今にも天に駆けあがりそうな、白馬にまたがった光宗君の像が安置されている。制作当時、徳川幕府は鎖国制度を施行していたため、3世紀以上も公開されていなかった。美麗で貴重な、まさに伊達家の秘宝だ。
秋は、この寺院が輝かんばかりの紅葉に溢れる季節。穏やかな陽光に透ける赤や黄色のもみじの色合いは、繊細で上品な趣である。松島湾の潮風や、この土地ならではの気候が育んだ傑作といえる。山門をくぐるともみじのトンネルになり、左手には「天の庭」と「地の庭」からなる石庭がある。松島湾の潮の流れを表現する白い砂と、紅葉のコントラストは、京都の寺院を彷彿とさせる。その先にあるのは本堂「大悲亭」。光宗君のかつての江戸納涼の亭を、二代藩主忠宗公の命により解体し、遠路はるばるこの地に移築したもの。
忠宗公の、我が子光宗君を悼む気持ちを、窺い知ることができる。大悲亭の前には、伊達藩江戸屋敷にあった小堀遠州作の庭を移設したといわれる「遠州の庭」がある。小堀遠州は、江戸時代前期、武将でありながら茶道の祖となり、建築や造園にも才能を発揮した。優れた感性に、時代と場所を超えて触れる奇遇を味わいたい。夜、ライトアップされたときには、心字の池が、漆黒の夜空と燃えるような紅葉を鏡のように映し出す。副住職の天野晴華さんは「自然そのものではなく、日本庭園ならではの紅葉の景色です。また、寺の紅葉でもあるので、心穏やかに見ていただければよいのではないかと思います」と話していた。日本三景松島の、秋の思いで作りに訪れたい。