千年旅行松島湾
平成9年に湾を活用した観光振興、地球環境保全や観光資源の保全を目的に設立された「世界で最も美しい湾クラブ」。世界遺産のモンサンミッシェル湾やハロン湾など世界の名だたる湾が加盟していますが、平成25年12月に初めて松島湾の加盟が認められました。日本三景としての美しい景観、海の恵みを与えてくれる豊かさ、そしてその地域に暮らす人々が湾を守り続けてきた歴史。世界に誇れる湾として、新たな称号が付与されました。
塩竈・松島図屏風には、左隻に描かれた塩竈エリア。陸奥国一之宮として尊崇を集めてきた鹽竈神社、御釜神社には神器とされる4口の釜がしっかり描かれています。湾の兜島(旧表記:甲島)、鎧島、馬の背などの特徴的形状も描かれ、当時から訪れた人の目を楽しませた様子がうかがえます。戦国時代に荒廃した塩竈・松島は、新たに支配者となった伊達政宗公により、現在に近いかたちに整備されました。当時の様子を伝えてくれるのがこの屏風です。右隻の松島には瑞巌寺の壮麗な伽藍と、日の光を受けて輝く海に五大堂、雄島などの島々が点在している様子が表されています。海は左隻にも続いており、塩竈港には松島へと出港する藩主専用船「御座船」が描かれています。
その上の一森山には、1704年に改築される以前、政宗公が造営した鹽竈神社の社殿の姿を見ることができます。そして、寺社の境内にも、町にも、海上に浮かぶ小舟にも人々がいます。これは多くの人々が同時にいたかどうかはさだかではありませんが、塩竈・松島を様々な人が行き交っていたことはたしかでしょう。良質な絵の具を用い、八曲一双という大画面に塩竈・松島の賑わいを描き出したことの屏風は、福岡の黒田藩が所持していたことから、仙台藩からの贈答品であったと考えられます。並ぶものなき名所として知られた塩竈・松島を手に入れた伊達家の歓喜と自負が画面にみなぎっています。