快浴洗心の湯 旅館大沼
湯治というと、温泉地で高齢者らが長期滞在し、病気療養するというイメージがありますが、その湯治を提案している温泉旅館が今でもあります。農林漁業者が閑散期に疲れを落とすために訪れたのも、それほど昔の話ではありません。5代目湯守の大沼伸治さんは「私どもの旅館にも、15年ほど前までは、宮城・福島沿岸から漁師さんたちが療養に訪れたものです。湯治はまさに人々の生活の一部であり、ライフスタイルそのものでした」と語る。
今はあまり見られなくなったとはいえ、人々が疲れ知らずなわけではありません。「現代社会は原因不明の不調を訴える人も多い。湯治は、現代医療と異なり、温泉に宿る自然のパワーをもらい、心身をトータルで回復させるケアです。先人が行ってきたものには時代を経ても変わらない力があります。現代だからこそ、もっと見直されるべき」ときっぱり。「旅館 大沼」のコンセプトは「温泉に入り、心と体を整える」こと。そしてより湯治に親しんでもらうため、畑で大豆を作り、時には星を眺め、音楽を聴くなど、鳴子ならではの魅力を生かした催しと共に湯治を提案しています。
「自然やアートを通じ、人と人がつながる場でもあります。気軽に参加してほしい」という。旅館には、通常の食事つきの宿泊プランと湯治プランがあり、湯治は1週間以上の本格的な滞在から、3泊ほどの短期滞在も可。自炊場は共同キッチンがあり、交流の場にもなっている。また、完全自炊か、ご飯とみそ汁が付く半自炊が選べ、湯治初心者でも安心です。温泉入浴指導員の資格を持つ大沼さんは「体を本当に休めるには2泊3日ほどの日数が必要」としながらも「とても無理、というならせめて1泊でも」と勧める。何よりもの魅力は8種類の風呂。開放的な大浴場や落ち着く小浴場、泉質や色も風呂により若干異なり、それぞれの個性が愉しめます。