煙雲館庭園
気仙沼市の「煙雲館庭園」は、眼下に太平洋を望む小高い場所にあります。ここは仙台藩伊達家御一家筆頭鮎貝家の居館で、近代短歌の先駆者として高名な国文学者の落合直文の生家としても知られています。この邸宅に並んで広がる約1650㎡の庭園は、気仙沼市の名勝の一つに数えられ、江戸時代初期に造られました。大崎市の有備館と並ぶ宮城の代表的な庭園です。
木々が生い茂る丘陵を庭の一部に取り入れ、東南に開けた構成になっているのが特徴的です。中央には池泉があり、その周りを巡りながら園内を観賞する回遊式池泉庭園で、無料で見学できますが、事前に電話での問い合わせが必要とのこと。「園路を右回りで進むと恋愛成就、左回りで進むと恋人との仲が永く続くというジンクスがあります」と話すのは、館主の鮎貝文子さん。
「直文の短歌の中に『恋人』という言葉が登場することにちなんで地元の高校生による有志団体が考案しましたのだそうです。直文は、近代短歌の歴史上はじめて「恋人」という言葉を作品の中に使ったといわれています。震災後に結成されたこの団体では「恋人」発祥の地とされる気仙沼で、恋人にまつわる逸話や美しい景色が見られるスポットを「恋人スポット」としてPRし、地域の活性化を図っています。