ムサシのほほえみ
ムサシがわが家で暮らし始めたのは、いまから19年前の平成7年のことでした。それ以来、彼が存命の時はもとより、今日でもムサシのことが話題にならない日はありません。今日も今日とて、ムサシ談義に花が咲き、「ムサシはいったい私たちのことをどう見ていたのだろう」という話になりました。相棒であることを自認している私は、そんなことを考えたことはありませんでした。
確かに彼と散歩をした時間は誰よりも長いし、寝る時に布団に潜り込んでくるのも私の方が圧倒的に多い。しかし、よく考えてみると、車に乗るときはお母ちゃんの隣の助手席が指定席で、もっとも居心地がよさそうだったし、お風呂でシャンプーしてもらうときもお母ちゃんでなければ絶対ダメでした。つまり、それにはそれなりのちゃんとした理由があったのでしょう。
そんな二人のやり取りを傍で興味深そうな目をして聞いていたムサシですが、ふと気がつくと、スウスウと寝息を立てて眠っていました。少なくとも、「どちらが一番か」などという次元の低い話にならなかったことが救いだったようです。そういえば、ムサシが最も悲しそうな顔をするのは、私たちが言い争いをしているときでした。どうだいムサシ、相棒も少しは大人になっただろう!