栗原市のイワナ
栗原市の最北端である栗駒沼倉耕英地区。この地でイワナの養殖が始められたのは1968年のことで、全区で初めての試みでした。きっかけは、入植者の一人である故数又一夫さんが、けがをして農作業ができなくなったのを機に、一念発起して池を掘り、電力に頼らず地形を生かして、地下水を流下させる養殖施設を築きました。当然、道具もなく手探りでのスタートだったそうです。
幾多の試行錯誤を経て、養殖は軌道に乗り始め、地域に手法が広まり耕英の名物になりました。父の一夫さんから「数又養殖場」を引き継いだ定男さんは、養殖の傍ら、妻の八千代さんとともに新鮮なイワナが味わえる飲食店「岩魚の館」を営んでいます。繊細なイワナは塩焼きにすると、身が柔らかく、皮目が香ばしく上品でくせがないため、全国からリピーターが訪れています。
しかし、平成20年6月この地を襲った岩手・宮城内陸地震により、水は枯れ、養殖場は甚大な被害を受けました。それでも、定男さんは「もう一度食べたい」という常連さんに後押しされて、再起のための一歩を踏み出しました。その矢先に東日本大震災が発生しました。幸い放射能は検出されていませんが、風評被害の影響で、販路は広がりませんが、めげることなく再生に取り組んでします。