パレット 築館本店(栗原市築館)
店内のあちこちで、パンをトレイにのせる人々のうれしそうな笑顔が見られる。この店の人気の理由は、完成度の高さと親しみやすさの両立だろう。代表取締役の高橋寛さんは、ヨーロッパに研修に行った際、本場の様々なパンや菓子を味わい、出来上がるプロセスや地域の風土に触れることでその美味しさの理由を知ることができたという。帰国後、そのクオリティに近づけようと努力してきた。「一流の味をお手本にしつつ、日本人の好みに合わせ、地域の方々に美味しいと思っていただけるような味にしています」と高橋代表。高齢の方や小さな子供も気軽に食べられるよう、柔らかいパンも作っているとのこと。
オープン当初は一人でパン作りをしていたそうだが、今では何人ものスタッフたちと、その思いを分かち合っている。小麦を最高級にこだわり、酵母は海水から採取したものを使用。また、真空・低温沸騰により食材の酸化や痛みを最小限にする「真空鍋」を取り入れるなど、設備も工夫している。代表的なパンは、創業当時からある「青豆パン」。カスタードクリームが練り込まれた生地は、ほどよく甘く、うぐいす豆が郷愁を誘う。ユニークなネーミングの「原人パン」にもファンが多い。無造作に焼かれたようなワイルド感がある。生地に黒糖を使っているので、ミネラルがたっぷり。
くるみとレーズンも入っていて、山の恵みへの感謝の気持ちが湧いてくる。宮城県産の食材を使うことも大事にしている。「ねぎ味噌のタルティーヌ」は、フランスパンと仙台味噌と宮城県産のねぎの斬新な組み合わせ。「クロワッサンハムエッグ」は、栗駒高原で平飼いされた鶏の有精卵をダイレクトに味わえる。濃くてクリーミーで、大自然のパワーを感じる。時代を見据えた商品の開発も。専務の高橋裕生さんはビール酵母の使用や、パンのSDGs的利用を考えている。7月には、大手企業と商品開発したプロテインパンがお目見え。ほどよい甘さがあって食べやすく、乳清とカゼイン由来のタンパク質が手軽に摂取できる。美容と健康効果が期待できる頼もしいパンである。