清昇堂(名取市飯野坂)
春らしい淡い色合いの雛飾りは、全て和菓子。男雛と女雛はもちろん桃の実、つづみ、雪洞、右近の橘、左近の桜、関西の雛祭りの和菓子である引きちぎり、菱餅が、浮島や外郎、練り切り、餡などで形作られている。ひとつひとつが可愛らしく、端正な味わいだ。三代目の中澤清彦さんは、小さい頃から二代目であるお父様の仕事を見ながら育った。
菓子作りの基礎は、東京の菓子専門学校で学んだ。授業が終わった後も、仲間と教室に残って技を磨く日々だったという。学校を卒業後、複数の老舗和菓子店で経験を積み、28歳のときにこの店に入る。「父の仕事を手伝いたかったのと、自分がどこまで技術を磨けたか試してみたかったので」と清彦さん。
30年の歳月が過ぎた今も研鑽を続け、食のプロや茶道の先生が太鼓判を押す和菓子を、日々生み出している。清彦さんが最も力を入れているのは、季節を美しく表現できる上生菓子。「昔、一緒に技を磨いた仲間たちも、今それぞれの場所で頑張っていると思うと励みになります」と感慨深げに話してくれた。