和み処 男山
阿部勘酒造店の酒が目指すところは明確だ。「地元の魚を美味しくいただくことのできるお酒」。創業300年余り、塩竈の地で暖簾を守ってきた酒蔵の面目躍如だ。「新鮮な魚の味や白身の魚の繊細な味を引き立てる、透明感を大事に、酒造りをしています」。阿部昌弘社長が語る通り、すっきりとしたきれいな味わいの奥に、港町・塩竈の滋味とでもいうような旨みが広がる。陸奥国一之宮・鹽竈神社のお膝元にある阿部勘酒造の操業は1716年(享保元年)。
仙台藩から酒造の免許である酒造株を与えられ、鹽竈神社の御用蔵として酒造りを始めた。それ以来、地元を中心に愛されている。まさに「塩竈の地酒」だ。阿部勘酒造が醸す酒は、海の幸だけにとどまらない料理とのコラボレーションを見せてくれる。阿部勘酒造から300m余りの距離にある「和み処 男山」の店主・佐藤強さんが、それを教えてくれた。阿部勘酒造の「於茂多加 男山」に因んだ店名が示す通り、日本酒のラインアップは阿部勘酒造一筋。
季節の材料を存分に生かしたコース料理(8~10品/税別8000円)に合わせて、阿部勘酒造の酒をとことん味わえる。「阿部勘さんのお酒と料理で一つの味になる。このお酒に何を合わせるのが良いか考えることが、料理を想像する起点になっています」と佐藤さん。歴史に裏打ちされた懐の深い酒。その秘訣は一つ所に安住しない姿勢にあるようだ。阿部さんはこう語る。「自分たちが造りたいお酒という目標は変えずに、人々の味覚の変化に対応する。酒造りの工程は変わるものではありませんが、常に変化を模索することが大事です」。