山の神まんじゅう本舗 村上屋
薄くてしっとりした白い皮に包まれているのは、甘さ控えめの粒あん。代表取締役の村上正衛さんは「まんじゅうというより、アンパンに近い糖度です」と話す。たしかに、やさしい甘さなので、ついもう一つ食べてしまいたくなる。この「山の神まんじゅう」は、小牛田にある子授・安産・子育ての神様を祀る山神社にあやかって、命名された。「小牛田まんじゅう」の名でも知られている。
村上屋のもう一つの名物まんじゅうは、「子宝に恵まれますように」という願いが込められた「子持ちまんじゅう」。山の神まんじゅうに、北海道産の白花豆が入っている。しっかりした豆の味わいが、あんの風味をより豊かにしており、食べ応えがある。創業は明治33年。大正から昭和にかけて、東北本線・石巻線・陸羽東線が交差する小牛田駅の構内では、売り子さんたちによって小牛田まんじゅうが売られていた。
かつては、数軒の店がオリジナルの小牛田まんじゅうを作っていたが、今はここ村上屋だけとなった。「昔は『山の神講』というのがあって、岩手方面の女性の方々が、金華山の黄金山神と小牛田の山神社を参拝するバス旅行がありました。当店のまんじゅうを、お土産として買っていただきました」と村上さん。女性が旅をすることが少なかった時代、このまんじゅうは、楽しい思い出を彩る一品だったのだろう。かつての小牛田駅の賑わいや、神社詣でをする女性たちの姿が、素朴なまんじゅうの味と重なり、ふと旅情を覚える。