割烹 滝川
江戸時代、北上川の舟運を生かした江戸への米の積み出し港として栄えた、石巻の中心部に墨廼江酒造はある。改修を重ねながら使い込まれてきた古くからの酒蔵は、石巻を訪れる者にこの港町の日常の風景の一コマを印象付けてくれる。墨廼江酒造が醸すのは、そんな港町・石巻にふさわしい「きれいで柔らかく気品漂う風味豊かなお酒」だ。兵庫の山田錦、新潟の五百万石、岡山の雄町など全国各地の優れた酒造好適米と宮城で開発された宮城酵母とのコラボレーション。
「品種が違えばお米のポテンシャルも違います。各地のお米ほど派手さはないがさわやかな香りと味わいを生み出す宮城酵母との組み合わせが、私たちが目指すお酒をもたらしてくれます」と6代目の澤口康紀社長。澤口さんは1989年(平成元年)に家業を継ぐため石巻に戻って以来、付加価値のある日本酒を追求してきた。そして現在、世間では食中酒が改めて評価されている。「お酒は地域の食文化とともにある。その価値が見直されたわけです」と澤口さん。石巻の食文化の中で墨廼江酒造が醸す酒を味わいたい。
そんな願いを叶えてくれるのが「割烹 滝川」だ。1914年(大正3年)創業の老舗で、うなぎ、釜めしをはじめ石巻の旬の素材をいかした料理が味わえる。「墨廼江さんのお酒は力強さがあり、味の濃い料理でも楽しめます。燗をつけても素材のうまみを引き立ててくれる。焼き物などとも合わせやすいですね」。店主の阿部司さんがそう教えてくれた。「うちはみんなでお酒を造り、みんなで売る。職人気質と商人気質を併せ持った蔵人が働く『ラグビー的な蔵』です」と笑う澤口さん。まさに「ONETAM(ワンチーム)の酒蔵だ。