鳴子ダム
あまり違いがないように見えるダムでも、詳しく見ていくとそれぞれに特徴がある。鳴子ダムの場合は、純粋に日本の技術だけで造られた初めてのダムということになる。大崎市を流れる江合川は、昭和22年(1947年)から4年連続で台風や大雨に見舞われ大きな被害を受けた。流域に住む人々の、安心して暮らせるようにしてほしいという願いを受けて建設計画が決まる。まだ終戦間もない時代のことで、それまでのダム建設は外国から技術者を呼んで工事が行われていたという。そんな中、このダムは国として初めて日本人だけの手で造られることになった。
日本中から優れた技術者が集められ、5年の歳月をかけて昭和32年(1957年)に完成したのである。同ダムは土木学会が選ぶ「選奨土木遺産」に認定されているが、その選定の理由は「日本の技術者だけで建設した国初の100m級本格アーチ式コンクリートダムというものである。鳴子ダムといえば、毎年GWに行われる「すだれ放流」と鯉のぼりが広く知られている。このすだれ放流は単なるイベントではなく、完成翌年から放流の安全確認のために毎年行われてきたもの。
アーチ式ダムは、コンクリートの使用量を少なくできる利点があるが、強い岩盤がない上に、建設技術が必要という難しさもあるのだという。それらの困難さを跳ね返しても国産技術にこだわった、当時の技術者たちの熱い気持ちが伝わってくるようだ。ダム周辺は見所・名所も多い。温泉情緒を残す鳴子温泉をはじめ東鳴子や川渡、中山平など温泉天国。夏はキャンプやバーベキューを楽しめる荒雄湖畔公園、鬼首間欠泉などもドライブがてら巡ってみたい。