㈱加美町振興公社 レストラン ぶな林
薬莱山はどこかほっこりした形をしている。仙台市の中心部から車で1時間足らず、その山容を見上げる緑豊かな山裾で、「やくらいビール」は醸造されている。特産品に蕨があることからわかるように、豊富な水は上質で美味しい。元々あった天然水をくみ上げる施設を利用して、ビール造りがスタートしてから20年が経つ。天然水とドイツ人ブラウマイスター(ビール醸造技術者)から受け継いだ技術、そしてドイツ産原料にこだわったピルスナー、デュンケル、ヴァイツェンに加えて、近年、復興応援ビール2種類を誕生させている。それは岡山大学の協力による円買い・湿害に強い大麦の品種開発に始まり、農家、そして醸造家のあらたん挑戦が実った地ビールでもある。
「大麦栽培も3年目にして成功し、2016年に発売にこぎつけた」と話すのは、地ビール製造所醸造担当の畠山崇裕さん。復興に関わる仕事がしたいと東京の職場を退職し、7年前に故郷に帰ってきた。地元加美町で収穫した大麦で醸造した「復興ビール」は、アメリカン・ペールエールスタイルで柑橘系の香りと苦みが特徴。もう一つの「希望の大麦」は東松島産大麦を使用して醸造し、すっきりとした飲み口のラガービールを柑橘風味に仕上げている。出来立てをサーバーからグラスに注いだビールは、そのクリーミーな泡に驚かされる。ふくよかな香り、深い味わい、そして最後にはフルーティな後味がふわっと広がり、ビールの醍醐味が実感できる。
「ここに来て、作っている環境の中で飲んでいただけると嬉しいですね」と畠山さん。まずは湿地もらうことが大切と、各地でのビールイベントに積極的に参加してPRしている。最近は、「醸造家さんがいらっしゃったら、お話も聞きたい」と来店するビール好きの方も増えているそうだ。仕込み釜をガラス越しに見ることができる「レストラン ぶな林」では、じっくりと煮込んだ「地ビールシチュー」や、薬莱特産の「わさびパスタ」もある。周囲には小名線、宿泊施設、アクティビティ施設も充実。ビールを味わいながら高原リゾートを満喫できる。