仙南シンケンファクトリー
仙南の田園風景の中を進んでいくと、かわいい塔屋が印象的なヨーロッパ風の建物が現れる。ここが角田の「仙南シンケンファクトリー」だ。中央の入口から入れば、一方はレストラン、一方はファーマーズマーケット。レストランの中もヨーロッパ調の落ち着いたはなやさがあり、ガラス越しに見えるビール醸造所の風景は、異国情緒たっぷり。原料の麦芽とホップはヨーロッパ、酵母は世界最古の修道院醸造所由来のもので造られる「仙南クラフトビール」。ヨーロッパでビールの醸造を学んだ方から指導を受け、22年前に始まったものだ。近年、日本地ビール協会が主催するインターナショナル・ビアカップで5年連続受賞に輝いている。
運営しているみやぎ仙南農業協同組合の氏家一裕係長によると、「実は、今の醸造士にかわってからビールの味が格段によくなり、評価も上がったんです」とのこと。いかに地ビールの味が醸造士との合出にかかっているのかを再認識させられる。醸造を担当する岡恭平さんは、「ともかくビールが好きで、美味しいビールが造りたくてここの門を叩きました」という情熱家だが、他の地ビール醸造士も同然だという。「熱心な方が多いですね。横のつながりも強く情報交換なども活発で、これからもっと地ビールが面白くなりますよ」と瞳を輝かせる。定番5種。その中のおすすめは角田産ササニシキを使用した「ササニシキIPA」。IPAとはインディア・ペールエーの略で、3種類のホップをふんだんに使い、苦みと香りを効かせたビール。
宮城県ではレギュラーで造っているところは少ないそうだ。仕込み水は、蔵王山麓の水をイオンやカルシュウム量を調整して用いている。ビールの原料となる水と米、そして料理にも蔵王由来の食材が使われている。「宮城蔵王産ジャパンXポークロースのソテー」は、豊饒なビールタイムをよりいっそう味わい深いものにしてくれること間違いなしだ。東京の店で仙南クラフトビールを知ったという地ビールファンが訪ねてくることもあるという。わざわざこの地に足を運んで、空冷サーバーからグラスに注いだ一杯を飲むのは、やはり最高の味わい方だろう。阿武隈急行の角田駅からは徒歩3分の近さ。電車を利用した「ちょい旅+地ビール」も、乙なもの。8月下旬、角田は地ビール・日本酒・梅酒が楽しめる酒まつりが開催される予定だ。