宮城の美酒
酒造蔵の大半が小規模で大量生産ができないため、県外に出回る地酒の銘柄はごくわずか。銘柄の知名度は低いものの、宮城県の酒造りの技術は国内トップクラスだ。それぞれ少量生産で技術を磨き、質の高い酒造りを続けてきた結果、県内の酒造蔵の「全国新酒鑑評会」金賞受賞率は3年連続全国1位、入賞率も2年連続で全国1位を誇る。宮城県の酒造蔵の"質で勝負する"酒造りの原点は1986年、県酒造組合が当時の加盟蔵52社とともに行った「みやぎ・純米酒の県宣言」にある。酒造アルコールや糖類などを加えた「普通の酒」が主流だった当時にあって、宮城県産米とこうじ、水だけで造る「純米酒を」主軸に据えた酒造りに着手。
減反の時代に少しでも地元の米の消費を増やす狙いもあって、宮城県の当時の主要品種だった「ササニシキ」100%の純米酒を完成させた。各酒造蔵が県産米を使った酒造りを続ける中、県産業技術センターは2000年に純米酒、醇米吟醸酒造りに適した「宮城マイ酵母」開発に成功。同年、低タンパクで純吟醸といった酒造りに適した宮城県オリジナルの酒造好適米「蔵の華」も誕生した。現在、宮城県で造られる日本酒の特定名称酒「吟醸」「純米」「本醸造」の割合は約9割に及ぶ。低アルコール酒向けの「みやぎ酵母・愛実」、吟醸酒用「宮城酵母・ほの馥(ほのふく)」も開発され、近年は多くの酒造蔵で低アルコール酒や発泡酒、古酒といった多様な酒造りが盛ん。
また、その土地産の米にこだわった「テロワール日本酒」造りも各地に広がっている。県内の酒造蔵27場が加盟する県酒造組合では「宮城の純米新酒初蔵出し」「宮城の酒コン」「みやぎ純米酒倶楽部・穣りの宴」といった地酒をPRする様々なイベントを開催している。「女性のための日本酒セミナー」といった取り組みも功を奏し、近年は女性ファンが増加。全国きき酒選手権大会への代表を選抜する今年の宮城県大会では代表2名がそろって女性が占める快挙となった。県内では入会を無料の宮城の酒のファンクラブ「日本酒サポーターズ倶楽部・宮城」も発動。宮城の地酒に関する情報を発信している他、独自のイベントなどで酒造蔵と会員の交流をサポートしている。