EVANS'89(エヴァンス'89)
「EVANS'89(エヴァンス'89)」には、地元はもとより、仙台や福島の浜通り方面からも常連客が訪れ、料理とワインに舌鼓を打ち、年に数回訪れるジャズのライブに酔いしれる。仙台方面から国道349号を角田市中心部に向かって走ると、左手に見える立派なログハウスがそれだ。今年12月で30周年。名前の由来はジャズピアノの巨人ビル・エヴァンス。そのエヴァンスと共演したフルートのジェレミ―・スタイグやベース奏者のエディ・ゴメスなどビッグネームがここで演奏を繰り広げた。「ジェレミ―・スタイグのエモーショナルな演奏はすごかったねえ」と店主の田中健一さん。木の温もりがあるログハウスで聴くライブは、都会のビルの中にあるライブ会場とは違った魅力がある。
ピアノの材質に使われる北米産のスプルース(マツ科の常緑樹)を用いたログハウスと聞いて納得。音の響きが違う。30代半ばで店を開いた田中さんがジャズにのめり込んだきっかけは、かつて丸光デパート(後のさくら野百貨店)の浦てのビルにあったジャズ喫茶「AVANT(アヴァン)」だ。当時はフリージャズの前世定期。アヴァンもフリージャズを流していた。「なれるまで時間がかかったけど、そこからジャズが゛好きになってジャズ雑誌で紹介されているレコードを買い集めたりしていましたね」と懐かしそうに振り返る。しかし、フリージャズと店の名前にするほど好きなビル・エヴァスンとは、ずいぶんかけ離れたいるように思い、議もをぶつけてみた。「ちょっとクセのあるタイプが好きなんですよ。ビル・エヴァンスはジャズ入門者に聴かせる定番の一つになるほどメジャーなイメージがあるけど、決してストレートには弾いていない。
だからこそ長年聴き続けられているんだと思います」。自慢のオーディオ装置でレコードを何枚かかけてもらった。目を閉じると、まるでテナーサックスのソニー・ロリンズやジョニー・グリフィンが目の前で演奏しているようだ。普段は料理を楽しむお客さんに配慮して抑えた音量で流して胃が、請われれば他のお客さんが帰った頃合いを見計らって、そのサウンドを味合わせてくれるという。ジャズを聴きながら味わう、絶品でボリューム満点の欧州風の料理の数々。そして厳選されたワイン。田中さんがこうつぶやいた。「文化がある町には、ジャズがきける店とフランス料理の店があるんですよ」。その言葉通り、田中さんは料理とジャズで県南の町の文化を支えている。