身勝手な電気剃刀
オヤジは、半世紀近く海外の某有名メーカーの電気剃刀を愛用している。今回で何代目になるかは数えたことはないが、他社の製品より優れているといって一度も浮気したことがない。今回手にしたのは、一昨年の誕生日に息子たちからプレゼントされたものです。以前使っていた電気剃刀はまだ十分使えるが、オヤジが腱鞘炎で手首を痛めているので、もう少し軽めのものをと思い、新型のものを選んでくれたものでした。オヤジは、同じメーカーのものでないとまずいと心配していましたが、中身はまさしく望み通りのものだったので、ほっとしたようです。何がともあれさっそく使ってみることにしましたが、あまり感触が良くなかったようです。最初は、まだ慣れないので使い方に問題があると思い、しばらく様子を見る事にして今まで使ってきましたが、どうやら、使い方や気のせいなどではないということを確信するに至ったようです。ズバリ言って、なかなか髭がそれないのです。もちろん、刃があたる角度や柄の持ち方なども研究しつくしたので、この結論に達したというわけでしょう。
息子たちのプレゼントなので、もし文句を言おうものなら、お母ちゃんに、「お父さんの使い方が悪いせいでしょう!」と一喝されるに決まっているので、自分でも「気のせいだ」「いいカミソリだ」と自分の心に暗示をかけてきたようですが、最近は、電池の消耗が激しく、しょっちゅう充電をしなければならないので、お母ちゃんも、「お父さん!このカミソリ、ずいぶん充電間隔が短いね」というようになりました。そこで、オヤジが本音を吐露したというわけです。オヤジが言うには、顔や顎を何回往復させても、一向に髭がそれない。それなのに、音はブルドーザーのエンジンのように大きく、そのくせ、髭がそり落とされているときの「ジョリ」とした音はまったく聞こえない。時間が無駄になるので、早々に髭剃りを終えることにして、髭剃り器の外刃を外して掃除しようとすると、髭の残骸はあまり見られず、代わりに白いうどん粉のようなものがたくさんたまっている。"これは製粉機か?" とぼやく始末です。
それがお母ちゃんにウケテ、「お父さん! それは面(つら)の皮ですよ」。いっそのこと、これは「剃刀」として売り出すのではなく、「面(つら)の皮剥き器」として売り出した方が売れるかもね。そして『面の皮の厚い人にピッタリな面(つら)の皮剥き器』というキャッチコピーで」などという無責任なことをいう。ちなみに、「面の皮の厚い人」は、自分の面の皮が厚いと思っている人はいない。それでも、案外、他人には薦めるかもしれませんね?それはともかく、息子たちがこのカミソリ機をオヤジにプレゼントするにあたり、値切ったわけでもなければ、在庫一掃セールで買ったわけでもありません。したがって、このカミソリ機の使い勝手が悪いのは、息子たちの責任ではあれません。さらに言うならば、メーカーや販売店にも悪意があってのことではないと信じます。その証拠に、オヤジは近いうちに、また同じメーカーのカミソリ器を同じ店で買うつもりのようです。ただし、次回は事前によく情報を収集して、後顧の愁いがないようにしてもらいたいものですね。ただ、心配なのは、「顔色が悪いようですが?」と言われるかもしれません。