塩釜・竜頭島
県が塩釜市新浜町の塩釜漁港で進める防潮堤新設工事で約40年前に地元の要望を受けて保存を決めた「竜頭島」を削っていたことがわかった。県は工事を急きょ中断、計画を変更して残る部分の保存を決めたが、変わり果てた姿に市民は肩を落とす。竜頭島は塩釜の入り江の古名「千賀の浦」にある八島の一つで古絵図にも描かれた。別名蛇島。かつて漁港整備の埋め立て工事で取り崩される計画だったが、1978年ごろ市民らの保存運動がおこり、県が陸地に組み込んで残した。
市や県の文化財指定は受けていないが、市教委が2005年にまとめた「塩釜市の文化財ガイド(改訂版)」の「その他の文化財」の項目に記載があり、保存の経緯に触れている。県は防潮堤工事に先立つ調査で島が特別名勝・松島に該当しないことを確認。近くの市魚市場関係者らに工事の是非を尋ね、「支障なし」との返答を得たため重機を入れたという。島は防潮堤の終点に位置し、県は島を削って接続道路を整備する計画だった。削られている島を見た市民が抗議し、県は7月10日に工事を中断した。工事で島は約4分の1が崩され、がれきが山積みになっている。
「びっくりして、がっかりした」。当時を知る塩釜市漁協の副組合長でNPO法人のボランティアガイド佐藤健太郎さん(84)は嘆く。「塩釜の観光資源、憩いの場としてPRしたいとおもっていたのに」と原状回復を願う。市民からは「事前にもっと調べてほしかった」「今後は案内板を設置するなどして後世に伝えるべきだ」といった声が上がる。県仙台地方振興事務所水産漁港部の金原修一漁港整備専門監は「30から40年前の保存運動までは把握できなかった。残っている部分は保存する」と話す。接続道路の代わりに防潮堤を陸閘(りくこう:ゲート)を設けて行き来する方法を県道中とのこと。