仙台雑煮
仙台雑煮については、たしか大震災前にも取り上げた記憶がありますが、今日は、仙台雑煮の一番の特徴である「だし」に「焼きハゼ」を使うことに焦点を当ててお話します。昔は、松島湾から石巻にかけてハゼがたくさん釣れました。それを焼いて乾燥させたのが焼きハゼです。雑煮はその土地のものを使うのが習わしなので、仙台雑煮には焼きハゼが使われたのです。焼きハゼは、昆布と一緒に一晩水に浸して、だしを取ります。そして、具材はズイキ、大根、ニンジン、ゴボウ、しみ豆腐です。これらの具材は、味が染みやすくなるように、一度茹でた後に凍らせるのが美味しさの秘密です。
それを解凍しただしで煮て、醤油や酒で味を調え、お餅を入れます。だしを取った後で煮つけにした焼きハゼ、イクラ、かまぼこ、せりを載せれば、見た目も豪華な仙台雑煮の出来上がりです。海の幸と山の幸、どちらもたっぷりの仙台雑煮は、海と山に囲まれた仙台らしい雑煮と言えるでしょう。しっかりだしの風味がして、とても美味しい仙台雑煮ですが、かつては大衆魚だったハゼの漁獲量が減り、価格も年々高くなっていくばかりで、今や高級魚となってしまいました。焼きハゼを作る人もどんどん減ってしまい、わずかに、石巻市の長面地区に残っているぐらいです。
私たちが子供のころには、お正月の食べ物として当たり前だった焼きハゼ。これからはお目にかかるのが難しくなってしまうのかもしれませんね。焼きハゼを使った仙台雑煮は、これからは珍しくなってしまうのかもしれません。確かに生産者も少なくなっているようですが、それでも、お正月が近づいているこの時期、スーパーやデパートで見かけることがあります。お椀の真ん中に堂々と焼きハゼが乗っかり、その両側に赤いイクラと緑のセリが陣取る。新年を寿ぐのにふさわしい一杯です。皆さんのご家庭でも、来年は是非、仙台雑煮にチャレンジしてみてください。明るい未来が見えてくるかもしれません。